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大阪地方裁判所 平成元年(ワ)691号 判決 1989年7月05日

主文

被告の昭和六三年一一月二八日の総会における、「ヴィラ椿二号館管理組合規約第五一条 理事に事故があり、理事会に出席できないときは、その配偶者又は一親等の親族に限り、これを代理出席させることができる。」と定める決議が無効であることを確認する。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

原告は主文同旨の判決を求め、被告は「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求めた。

第二  原告の請求原因

一  被告は、別紙目録一表示の一棟の建物につき、区分所有権を有する区分所有者全員をもって構成する管理組合法人であり、原告は、別紙目録二表示の専有部分の建物について区分所有権を有する、被告の組合員である。

二  被告は、建物の区分所有等に関する法律三〇条に基づき、ヴィラ椿二号館管理組合規約と称する規約を定めた。

右規約によると、被告は、七名以上一〇名以内の理事を置き、被告を代表すべき理事として理事長を理事の互選により選任し、理事長は被告の業務を統括することとしているほか、特に理事会の制度を設け、理事長は理事会の承認を得て、他の理事にその事務の一部を委任することができ、また、理事は、理事会を構成し、理事会の定めるところに従い、管理組合の業務を担当する、と定めている。

また同規約は、理事会の権限につき、<1> 収支決算書及び事業報告書、収支予算案及び事業計画案並びにその他総会に提出する議案 <2> 規約の改廃 <3> 使用細則の制定又は改廃 <4> 修繕積立金及び借入金に関する事項 <5> 区分所有者等に対する規約六三条に定める勧告又は指示等、その他の事項について決議すると定めている。

三  被告の昭和六三年一一月二八日の総会は、右規約の第五一条として、「理事に事故があり、理事会に出席できないときは、その配偶者又は一親等の親族に限り、これを代理出席させることができる。」との規約を新設する決議(以下 「本件総会決議」という)をした。

四  しかし、本件総会決議は、次に述べるとおり、その内容が法令に違反するから無効である。

すなわち、まず前記二の規約の定めるところによれば、被告の理事会は、被告の業務執行を決し、理事の職務の執行を監督する権限を有する議決機関ということができるところ、被告の理事は、とくに規約で設けた議決機関である理事会の構成員であるから、理事会での審議、決議に参加することは、理事の職務の本旨というべきであり、理事会での審議、決議という包括的な行為について他人をして代理させることを許される道理がない。しかして、民法五五条によれば、理事は、定款、寄附行為または総会の決議によって禁止されない場合に限り、特定の個会の行為についてのみ、他人をして代理させることができるだけであって、包括的な代理は許されていない。

しかるに、本件総会決議は、理事会に他人を代理出席させることができるものとして、理事会での審議、決議への参加という包括的行為について代理を許している。このように理事に包括的な代理を許す規定を新設する決議は、違法無効というべきである。

五  よって、原告は、本件総会決議が無効であることの確認を求める。

第三  請求原因に対する被告の答弁と主張

一  請求原因一ないし三の事実は認める。

同四の主張は否認する。

二  被告の主張

民法五五条は、理事が行う法人の代表権に関するものであり、被告が、理事会において、被告じしんの意思を形成するためのばあいに適用されるべきものではない。

また、理事の理事会への出席は、その招集通知にも、会議の目的を明示して特定しており、したがって、理事会での審議、決議に参加することは包括的な行為ではない。

第四  証拠関係(省略)

別紙

目録

(一棟の建物の表示)

和歌山県西牟婁郡白浜町椿一〇五五番地三〇

建物の番号 ヴィラ椿二号館

鉄筋コンクリート造陸屋根八階建

一階 九四一・二三平方メートル

二階ないし六階 九〇七・八〇平方メートル

七階 七二七・七二平方メートル

八階 六〇・九〇平方メートル

(敷地権の目的たる土地の表示は省略)

(専有部分の建物の表示)

家屋番号 椿一〇五五番三〇の二八 建物の番号 B二一六

鉄筋コンクリート造一階建居宅

二階部分 七九・九五平方メートル

(敷地権の表示は省略)

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